スキップしてメイン コンテンツに移動

Kさん控訴陳述書

 続いてご長男 、Kさんの控訴陳述書です。



 仙台高等裁判所 民事部御中

         2021年5月20日

            控訴人 猪狩●●

 

控訴審陳述書

 

1 東京電力は、父が死亡した半年後にスマホを全作業員に配布しています。

スマホを財政上の理由で配布できないという主張が、東電の詭弁であることを明らかにするため、私は本人尋問で、父が亡くなった後に1Fで稼働する全作業員に東電がスマホを貸与している報道がインターネット上で行われている事実を証言しました。

しかし判決は証言を取り上げないで、「作業員に対して、携帯電話等の通信機器を支給するのは、相当な維持費の支出や管理が必要となる」として、東京電力の詭弁を擁護しました。  

また、証人尋問予定であった森氏の陳述書に、父がER室に入室した13時10分直後にAEDを試みたという記述があります。しかし、実際にAEDが試みられた時刻は、森氏が陳述書に添付した資料には、入室から19分も経過した13時29分とあります。スマホを配布しない財政上の理由の件にしてもAEDの件にしても、偽りについては偽りであると、判決が述べるべきでした。

 

2 スマホを被ばく労働の現場に持ち込むことには抵抗があります。

私は、東電が「傷病者発生の連絡カード」を配布し、傷病者が発生した場合には事前に救急医療室に架電するよう指導したことに関連して証言しました。

私は証言でも述べましたが、積極的に自分のスマホを被ばく労働の現場に持ち込む人は少ないと思います。東電が作業員にスマホを配布せずに、父の倒れた時のようにスマホを持つ人が誰もいなければ、東電が作業員に所持を義務付けた、ER室の電話番号が二つ書いてある「傷病者発生の連絡カード」の意味がありません。判決は、傷病者発生の連絡カード」を皆に持たせて形だけ整えれば、救急医療体制に問題ないとしているような気がします。

高等裁判所におきましては、地方裁判所の誤りを正して公正な判決をくださるようお願いいたします。

                                 以上



コメント

このブログの人気の投稿

集会報告

遅くなりましたが5月の「福島第一原発過労死責任を追及する会結成 遺族を支援し共に闘う大集会」 の報告をアップします。 弁護団の発言と、ご遺族の発言は別にアップします。 5月 19 日、いわき市労働福祉会館で「福島第一原発過労死責任を追及する会結成 遺族を支援し共に闘う大集会」が約 70 名の参加で開催されました。 冒頭、呼びかけ人の 1 人でもあり「フクシマ原発労働者相談センター」の狩野代表から、開会の挨拶と取り組みの経過報告が行われました。狩野さんは「(ご遺族が)事実関係の資料をほんとうに細かく調べて集めてくれた。その労力には本当に頭が下がる。それが労災認定につながった」とご遺族の奮闘に敬意を表しながら、これまでの相談事例を紹介。「賃金未払、危険手当未払などが多かったが、過労死の相談は初めてだった。この裁判が二度と過労死を起こさせない闘いになる」と取り組みの意義を述べてくれました。 次にやはり呼びかけ人である「東京労働安全衛生センター」の飯田事務局長から労災を勝ち取った経緯の説明がありました。(労災についての詳しい経緯はブログ 「事件の概要と労働実態」 をご覧下さい。 https://investigation1026.blogspot.com/2019/04/blog-post_0.html ) 飯田さんは、「遺族のおふたりは悲しみや怒りを胸に秘めながら、遺族の立場で医師や同僚やほかの下請け労働者から話を聞いてこられた。こうした並々ならぬご遺族の努力と真相を解明したいという思いを受け止め、どうやって労災を認めさせるかが課題でした。」という思いを語り、「(労基署は)いわきオールからイチエフへの移動を『出張である』と言い始めた。」「移動を場合によっては労働時間として認めるが、過労死の認定基準における過重負荷としては認めないという主張をし始めた。『こんな屁理屈を認めるわけには行かない』と意見書を提出し労災として認めさせた」と労災申請の報告を行ってくれました。 その後弁護団のお二人から裁判の意義と経過報告を行ってもらい、休憩ののち Google Earth を使っての猪狩さんの労働実態の説明、ご遺族のおふたりの発言へとプログラムは移りました。(弁護団の報告とご遺族おふたりの報告は別掲します。) 集会の後半に、全国一般いわき自由労組の桂...

Mさん証人尋問

 2月25日、未払賃金裁判で猪狩忠昭さんの同僚であったMさんの証人尋問が行なわれました。  久しぶりの公開での裁判ということもあって、裁判所の前でアピール行動を行ってから裁判に臨みました。アピール行動ではいつも駆けつけてくれる宮城合同労組や、ふくしま連帯ユニオン、東京労働安全衛生センターの仲間の他にも、東京から駆けつてくれた全国一般労働組合全国協議会の仲間や、あらかぶさんを支える会からも発言を受けることができました。  証人として出廷したMさんはとても誠実に労働実態について証言をしてくれました。  早朝4:30に出勤し、それがイチエフへの入構に必要なIDやWIDの準備であり、元請宇徳から命じられた検温、血圧測定のためであったこと。宇徳からの依頼でイチエフ入構前に宇徳事務所に寄って納品を行い、それはいわきオールの業務として行っていたこと。  イチエフに着いてからも、決められた移動ルートを使っての移動や、セキュリティチェックや入構手続き・構内の移動などでどれくらい時間がかかるか、「休憩時間」と言われている時間が実際は作業の準備時間であったとについて詳細な証言をしてくれました。  被告・いわきオールの新妻弁護士からの反対尋問も行われ、新妻弁護士は「誘導尋問のようなことはしたくない」と前置きしながら、過去に新妻弁護士はMさんへの聞き取りを行った際に、Mさんが「(いわきオール)馬目社長から、『高速を使ってもいい』と指示された」と言っていたことを問いただしました。しかしMさんは「それは労基署の指導が入った後であり、猪狩さんと一緒に働いていた時のことではありません。猪狩さんと一緒に働いていた時には(『高速を使ってもいい』という指示は)、私は聞いていません」と力強く答えてくれました。  構内の準備時間を短くしようとする質問、例えば「防護服を脱ぐのにはどれくらいの時間がかかりますか?」という質問にも、「脱ぐのだけなら1分くらいですが、スクリーニングがあります。」と実態をきちんと証言してくれました。  裁判官も補充尋問を行い、サマータイム時の休憩について「トイレやタバコ、コーヒーを飲んだりはできますか?」という質問にも「それはできません」とはっきりと答えてくれました。(裁判官のこの質問は、後の報告集会でも「あまりににもイチエフの実態を知らなすぎる」と...

控訴棄却を弾劾する!! あと一歩力及ばず!!

  5月19日、仙台高裁で判決がありました。残念ながら判決内容は控訴棄却。救急医療体制の不備について東京電力・宇徳の責任を認めない不当な判決でした。イチエフ構内の救急医療体制の責任はどこにあるのか、誰にあるのか。誰が労働者の健康と命を守るのか。私たちはこれからもその事を問い続けていく。  しかし、この判決によって東電と宇徳が免罪されたということでもありません。  判決は、「忠昭の異常に気がついた時点で救急医療室に事前連絡が入っていれば、救急医療室において防護服の着用など放射線のスクリーニング検査の準備をし、救急医療室に迅速に急病人を受け入れて直ちに救急処置を施す準備をすることができたはずであって、そうすれば忠昭が午後1時10分より数分前に救急医療室で医師の治療をうけることができたといえる。」と指摘し、事前連絡がなかったために治療開始に数分の遅れが生じたことを認めました。  さらに「作業グループ内に1つでも緊急連絡用の携帯電話が配布され、急病人が発生した場合には速やかに救急医療室に電話連絡する必要があることが作業員に周知され、数分でも早く治療を受けることができたならば忠昭を助けることができたのではないかと悔やまれる気持ちになるのは、実際に忠昭の命を助けられたかは必ずしも明らかでないとしても、その気持ちが理解できないわけではない。」と忠昭さん死亡当時の救急医療体制に疑問の声と遺族の心情に理解を示しました。  それだけではありません。  忠昭さんが働いていた整備工場には固定電話が設置されておらず、「…忠昭を救急医療室に搬送した作業員は誰一人として携帯電話を持たず、搬送中に事前連絡をしようにもできなかった。また、救急医療室に入室するには、除染室に入った後、救急医療室に通じる内扉を叩いて内部の職員を呼ぶように掲示されているにすぎず、忠昭が搬送された際にはすぐに内部の職員が気づいたとはいえ、1Fという最先端の技術を扱う事業所であれば、インターフォンを設置するなど、もっと迅速かつ確実に急病人の症状を伝えられる設備も十分に考えるべきであったといえる。」、「…放射線被曝のリスク管理も含む各種の安全対策を担うことができるのは原子力発電所を設置、運営してきた被控訴人東電以外にはなく、被控訴人東電の第一義的な責任の下で、元請事業者、関係請負人と連携し、労働安全衛生水準の向上に努めな...