スキップしてメイン コンテンツに移動

5月19日、控訴審判決!

  控訴審の判決が5月19日に決まりました。

 報告が滞おっていましたが、昨年9月の第一回口頭弁論において裁判長から和解を強く勧められていました。この間和解協議が続けられていましたがそこで示された和解案は遺族が納得できるものではありませんでした。遺族は控訴の原点に立ち返り、救急医療体制の不備を追及し判決を求める決意を固めました。

 以下に事務局からの案内を貼り付けます。

 最後まで皆様の支援をお願いします。(M)



福島第一原発過労死責任を追及する会、会員の皆様方へのお知らせ

 

 

仙台高裁・控訴審の判決日時が5月19日13時15分に決まりました

共同代表・事務局長 狩野 光昭

事務局法務担当 星野憲太郎

 

 長いあいだ猪狩忠昭さん遺族を励まし物心両面のご支援を注いでこられた全国の会員の皆様方に、心から感謝申し上げます。

 

 遺族は、いわき労基署の労災認定に対する消極的態度を許さず、認定実現のための申し入れを繰り返し行い、ついに2018年10月、長時間労働を原因とする過労死認定を闘い取りました。また、忠昭さんを無給で長時間労働をさせた雇用者いわきオールに対する未払い賃金請求裁判においては、当時の同僚が亡き忠昭さんの過労死ラインを超える長時間労働を証明する証人として法廷で証言し、2020年3月に勝訴をかちとることができました。

 

そして過労死認定と未払い賃金請求裁判の勝訴を土台として闘われたいわきオール及びその2名の役員、東京電力に対する損害賠償請求裁判は、2021年3月、福島地方裁判所いわき支部で判決が下されました。この判決で、いわきオール及びその2名の役員の過労死責任と損害賠償責任が認定され、その後の当事者同士の交渉で、いわきオールの役員が遺族に謝罪し賠償金を支払うという成果をかちとることができました。

しかし、いわき支部が宇徳と東京電力の責任を一切認定しなかったため、遺族はいわき支部の判決の取り消しを求めて仙台高等裁判所に控訴しました。

すでに会報7号でお知らせしましたが、昨年9月16日に開かれた控訴審第1回口頭弁論で、裁判長が東京電力と宇徳の道義的責任について約20分間にわたって糾弾するという、我々支援者も経験したことのない場面に出会いました。続いて裁判長は当事者双方に対し和解協議に入るよう要請しました。併せて当事者双方の主張・立証をこの日で終結(結審)する宣言も行いました。この宣言は、東京電力と宇徳に道義的な責任はあるとしても、裁判の判決を左右する法律上の責任に関しては、仙台高裁で改めて議論する必要がないという表明とも考えられます。

この裁判における遺族側の主張は、東京電力と宇徳が適切な救急医療体制をとっていれば,忠昭さんが死亡することがなかったであろうとするものです。これに対し東京電力は、過去の複数の医療事件における最高裁判例を引用して、仮に東京電力に過失があったとしても、その過失がなければ忠昭さんが生存していたであろうと認められる高度の蓋然性(8~9割の確率性)を、遺族側がが証明しなければ、損害賠償請求は成り立たないという主張を行っています。控訴審の答弁書でも生存可能性が低かった旨の主張をしています。

 

遺族側と東京電力及び宇徳側による和解協議は、昨年10月29日と12月24日に行われ、今年2月1日には相当な時間をかけて行われました。しかしながら3回の協議を通して出来あがった和解案は、控訴した遺族が納得できる内容に至らず、裁判所に代理人弁護士が和解しない旨の連絡を3月10日に行いました。

和解協議を通じてですが、遺族は控訴に至った目的をもう一度考え直し、控訴理由書・陳述書で明らかにした救急医療体制の不備、忠昭さん死亡後にスマホの貸与を試験的に実施したこと、新たに証拠として提出した全労協の申し入れへの回答(会報7号参照)の反訳文-「携帯電話の持ち込みを禁止していなかった」という東電・宇徳の主張を東電自身が否定した-などこれまでに弁護団・支援者とともに作り上げてきた主張に対して仙台高裁の判断を求めたい決意をしました。そして裁判所が判決を出すこととなりました。

控訴審でも、第1審と同様に過去の最高裁判決が遺族側に高いハードルを課しており厳しい面がありますが、ぜひとも遺族の闘いを最後までご支援願います。

コメント

このブログの人気の投稿

集会報告

遅くなりましたが5月の「福島第一原発過労死責任を追及する会結成 遺族を支援し共に闘う大集会」 の報告をアップします。 弁護団の発言と、ご遺族の発言は別にアップします。 5月 19 日、いわき市労働福祉会館で「福島第一原発過労死責任を追及する会結成 遺族を支援し共に闘う大集会」が約 70 名の参加で開催されました。 冒頭、呼びかけ人の 1 人でもあり「フクシマ原発労働者相談センター」の狩野代表から、開会の挨拶と取り組みの経過報告が行われました。狩野さんは「(ご遺族が)事実関係の資料をほんとうに細かく調べて集めてくれた。その労力には本当に頭が下がる。それが労災認定につながった」とご遺族の奮闘に敬意を表しながら、これまでの相談事例を紹介。「賃金未払、危険手当未払などが多かったが、過労死の相談は初めてだった。この裁判が二度と過労死を起こさせない闘いになる」と取り組みの意義を述べてくれました。 次にやはり呼びかけ人である「東京労働安全衛生センター」の飯田事務局長から労災を勝ち取った経緯の説明がありました。(労災についての詳しい経緯はブログ 「事件の概要と労働実態」 をご覧下さい。 https://investigation1026.blogspot.com/2019/04/blog-post_0.html ) 飯田さんは、「遺族のおふたりは悲しみや怒りを胸に秘めながら、遺族の立場で医師や同僚やほかの下請け労働者から話を聞いてこられた。こうした並々ならぬご遺族の努力と真相を解明したいという思いを受け止め、どうやって労災を認めさせるかが課題でした。」という思いを語り、「(労基署は)いわきオールからイチエフへの移動を『出張である』と言い始めた。」「移動を場合によっては労働時間として認めるが、過労死の認定基準における過重負荷としては認めないという主張をし始めた。『こんな屁理屈を認めるわけには行かない』と意見書を提出し労災として認めさせた」と労災申請の報告を行ってくれました。 その後弁護団のお二人から裁判の意義と経過報告を行ってもらい、休憩ののち Google Earth を使っての猪狩さんの労働実態の説明、ご遺族のおふたりの発言へとプログラムは移りました。(弁護団の報告とご遺族おふたりの報告は別掲します。) 集会の後半に、全国一般いわき自由労組の桂...

Mさん証人尋問

 2月25日、未払賃金裁判で猪狩忠昭さんの同僚であったMさんの証人尋問が行なわれました。  久しぶりの公開での裁判ということもあって、裁判所の前でアピール行動を行ってから裁判に臨みました。アピール行動ではいつも駆けつけてくれる宮城合同労組や、ふくしま連帯ユニオン、東京労働安全衛生センターの仲間の他にも、東京から駆けつてくれた全国一般労働組合全国協議会の仲間や、あらかぶさんを支える会からも発言を受けることができました。  証人として出廷したMさんはとても誠実に労働実態について証言をしてくれました。  早朝4:30に出勤し、それがイチエフへの入構に必要なIDやWIDの準備であり、元請宇徳から命じられた検温、血圧測定のためであったこと。宇徳からの依頼でイチエフ入構前に宇徳事務所に寄って納品を行い、それはいわきオールの業務として行っていたこと。  イチエフに着いてからも、決められた移動ルートを使っての移動や、セキュリティチェックや入構手続き・構内の移動などでどれくらい時間がかかるか、「休憩時間」と言われている時間が実際は作業の準備時間であったとについて詳細な証言をしてくれました。  被告・いわきオールの新妻弁護士からの反対尋問も行われ、新妻弁護士は「誘導尋問のようなことはしたくない」と前置きしながら、過去に新妻弁護士はMさんへの聞き取りを行った際に、Mさんが「(いわきオール)馬目社長から、『高速を使ってもいい』と指示された」と言っていたことを問いただしました。しかしMさんは「それは労基署の指導が入った後であり、猪狩さんと一緒に働いていた時のことではありません。猪狩さんと一緒に働いていた時には(『高速を使ってもいい』という指示は)、私は聞いていません」と力強く答えてくれました。  構内の準備時間を短くしようとする質問、例えば「防護服を脱ぐのにはどれくらいの時間がかかりますか?」という質問にも、「脱ぐのだけなら1分くらいですが、スクリーニングがあります。」と実態をきちんと証言してくれました。  裁判官も補充尋問を行い、サマータイム時の休憩について「トイレやタバコ、コーヒーを飲んだりはできますか?」という質問にも「それはできません」とはっきりと答えてくれました。(裁判官のこの質問は、後の報告集会でも「あまりににもイチエフの実態を知らなすぎる」と...

控訴棄却を弾劾する!! あと一歩力及ばず!!

  5月19日、仙台高裁で判決がありました。残念ながら判決内容は控訴棄却。救急医療体制の不備について東京電力・宇徳の責任を認めない不当な判決でした。イチエフ構内の救急医療体制の責任はどこにあるのか、誰にあるのか。誰が労働者の健康と命を守るのか。私たちはこれからもその事を問い続けていく。  しかし、この判決によって東電と宇徳が免罪されたということでもありません。  判決は、「忠昭の異常に気がついた時点で救急医療室に事前連絡が入っていれば、救急医療室において防護服の着用など放射線のスクリーニング検査の準備をし、救急医療室に迅速に急病人を受け入れて直ちに救急処置を施す準備をすることができたはずであって、そうすれば忠昭が午後1時10分より数分前に救急医療室で医師の治療をうけることができたといえる。」と指摘し、事前連絡がなかったために治療開始に数分の遅れが生じたことを認めました。  さらに「作業グループ内に1つでも緊急連絡用の携帯電話が配布され、急病人が発生した場合には速やかに救急医療室に電話連絡する必要があることが作業員に周知され、数分でも早く治療を受けることができたならば忠昭を助けることができたのではないかと悔やまれる気持ちになるのは、実際に忠昭の命を助けられたかは必ずしも明らかでないとしても、その気持ちが理解できないわけではない。」と忠昭さん死亡当時の救急医療体制に疑問の声と遺族の心情に理解を示しました。  それだけではありません。  忠昭さんが働いていた整備工場には固定電話が設置されておらず、「…忠昭を救急医療室に搬送した作業員は誰一人として携帯電話を持たず、搬送中に事前連絡をしようにもできなかった。また、救急医療室に入室するには、除染室に入った後、救急医療室に通じる内扉を叩いて内部の職員を呼ぶように掲示されているにすぎず、忠昭が搬送された際にはすぐに内部の職員が気づいたとはいえ、1Fという最先端の技術を扱う事業所であれば、インターフォンを設置するなど、もっと迅速かつ確実に急病人の症状を伝えられる設備も十分に考えるべきであったといえる。」、「…放射線被曝のリスク管理も含む各種の安全対策を担うことができるのは原子力発電所を設置、運営してきた被控訴人東電以外にはなく、被控訴人東電の第一義的な責任の下で、元請事業者、関係請負人と連携し、労働安全衛生水準の向上に努めな...