スキップしてメイン コンテンツに移動

11・30 裁判報告集会

 いわきオールへの抗議行動を終えたあと、小名浜公民館に移動。昼食をはさんで裁判報告集会に移りました。
 報告集会への参加者は最終的に23名でした。
 まず斎藤弁護士から残業代未払裁判について「長時間労働が原因で猪狩さんは亡くなった。

労基署がそう判断したから労災が認められた。オールの『長時間労働をさせていない』という主張は崩れ去っている。」、「企業は従業員の健康を守らなければならない。働かせる側は従業員の命を奪われないようにする義務がある。いわきオールは労働時間を管理する能力があるのにそれを怠った。」と、移動やミーティングの時間を労働時間として認めようとしないオールの主張の稚拙さを明らかにされました。
損倍裁判については「イチエフ救急救命体制を問う裁判。高い放射線という特殊環境のための装備で、体や精神に負荷がかかる。そのための医療・救急体制は万全でなければならないが、万全であったのか。これは猪狩さんだけの問題ではない。」と裁判の意義を確認。また損倍裁判のなかの東電記者会見について「労災認定の手続きのなかで、現場での労働で体調を悪化させたことが明らかになった。なのに東電は『現場での労働と関係ない』という記者発表をした。東電の責任逃れという体質が明らかになった。」と東電を激しく非難しました。
 霜越弁護士は裁判の流れについて説明してくれました。
 「残業代未払裁判の争点としては、始業・終業はいつなのか。我々はタイムカードを押した時間だと考えているが、オールは『タイムカードを押してから移動時間があった。』『帰社してからも仕事をしていない時間があった。』と主張している。しかし、時間管理は経営者の責任である。タイムカード以外にも管理の方法はあるのにそれを怠った。休憩時間も然り。」とオールの責任を明らかにしながらも、「イチエフ危険手当を(残業代計算の)基礎賃金に入れるかかどうかは、裁判所の判断しだい」と予断を許さない状況であることを説明されました。
損倍裁判については「忠昭さんと一緒にいた労働者3名が、3名とも携帯を持たされていなかった。その不備を追及したい。東電は『作業員全員に携帯を持たすのは不合理』と主張している。イチエフという特殊性や、猪狩さん以外にも事故が多く起こっているにも関わらず『経済的合理性を主張するのはおかしい』と追求して行く。」と発言。
 また損倍裁判のなかの東電記者発表については「少なくとも充分な調査が出来ていないのなら『調査中』と発表すべきである。『因果関係がない』と言ったのは誤りだ」と東電を強く非難しました。
 最後に「裁判所は和解を強く勧めている。しかし、遺族はお金が欲しいのではない。遺族の『想い』に応えるためにも、裁判で遺族が発言できるようにしていきたい」と決意を述べられました。

 遺族のAさん(忠昭さんのお連れ合い)とIさん(Aさんの妹さん)が登壇されました。
Aさんは「夫の気持ちを生きているうちに聞くことができなかった。気持ちをちゃんと聞いてあげることができなかった。今働いている4,000人の方がどんな想いで働いているのか、何が不安で何が危険か、生の声を聞いてあげたい。」と今も働いている労働者への想いを語り、「3・11で亡くなった東電社員の方は東電の慰霊碑に名前が刻まれていると聞いた。社員ー下請けの関係なく、亡くなった方の慰霊碑を双葉郡に作りたい」と、これからの想いを語りました。(Iさんはまたサーターアンダキーを作ってきてくださいました。)
 また、「報道では『作業員』と言われるが、体力的にも精神的にもたいへんな想いをしてみんな働いている。単なる『作業するひと』ではない。もっと尊厳を持って欲しい」と訴えられました。
 最後にIさんから忠昭さん葬儀の場で流されたDVD(忠昭さん長男作成)の上映がありました。

 次に特別報告として東京労働安全衛生センターの飯田事務局長から「ベトナム人技能実習生除染被ばく労働裁判」の報告がありました。2015年7月に来日したベトナム人技能実習生3名が鉄筋施工や型枠施工と言われながらも、実際は郡山市や本宮市、浪江町などので除染などに従事させられた問題です。
 浪江町などの「除染特別地域」での除染作業を行う業者には特別教育の実施や、被ばくの危険性、防護対策などの知識や実務経験を提供しなくてはならないのに、3名はYouTubeにアップされた教育動画を見させられたのみ。
3名が加入した全統一労組は、雇用会社に情報開示・未払賃金の支払い・除染業務に従事させたことへの謝罪を求めたが、会社は拒否。東京都労働委員会へ斡旋を申請、そして9月に提訴に踏み切ったことが報告されました。
 ずさんな安全対策のもと働かせれている技能実習生らが存在する一方で、「国は『発電所での特定技能外国人の就労は行わない』と報告しながらも、昨年の交渉では『建設工事に該当しない除染等に特定技能外国人を付随的に従事させることはありえる』としている」と警鐘を鳴らされました。

 最後に遠方より駆けつけてくれた「あらかぶさんを支える会」や、「NPOウシトラ旅団」をはじめ時間の許す限り参加者からの感想や意見を表明してもらい、集会を終えました。
 参加してくださった皆様、ありがとうございました。
 次回未払賃金裁判は12月24日が弁論(久しぶりの公開・証人申請)です。13時30分から福島地方裁判所いわき支部になります。お時間のある方は、ぜひご参加ください(裁判前12時30分からアピール行動、裁判終了後にいわき市労働福祉会館で報告集会を予定しています。こちらもぜひご参加ください)。





コメント

このブログの人気の投稿

集会報告

遅くなりましたが5月の「福島第一原発過労死責任を追及する会結成 遺族を支援し共に闘う大集会」 の報告をアップします。 弁護団の発言と、ご遺族の発言は別にアップします。 5月 19 日、いわき市労働福祉会館で「福島第一原発過労死責任を追及する会結成 遺族を支援し共に闘う大集会」が約 70 名の参加で開催されました。 冒頭、呼びかけ人の 1 人でもあり「フクシマ原発労働者相談センター」の狩野代表から、開会の挨拶と取り組みの経過報告が行われました。狩野さんは「(ご遺族が)事実関係の資料をほんとうに細かく調べて集めてくれた。その労力には本当に頭が下がる。それが労災認定につながった」とご遺族の奮闘に敬意を表しながら、これまでの相談事例を紹介。「賃金未払、危険手当未払などが多かったが、過労死の相談は初めてだった。この裁判が二度と過労死を起こさせない闘いになる」と取り組みの意義を述べてくれました。 次にやはり呼びかけ人である「東京労働安全衛生センター」の飯田事務局長から労災を勝ち取った経緯の説明がありました。(労災についての詳しい経緯はブログ 「事件の概要と労働実態」 をご覧下さい。 https://investigation1026.blogspot.com/2019/04/blog-post_0.html ) 飯田さんは、「遺族のおふたりは悲しみや怒りを胸に秘めながら、遺族の立場で医師や同僚やほかの下請け労働者から話を聞いてこられた。こうした並々ならぬご遺族の努力と真相を解明したいという思いを受け止め、どうやって労災を認めさせるかが課題でした。」という思いを語り、「(労基署は)いわきオールからイチエフへの移動を『出張である』と言い始めた。」「移動を場合によっては労働時間として認めるが、過労死の認定基準における過重負荷としては認めないという主張をし始めた。『こんな屁理屈を認めるわけには行かない』と意見書を提出し労災として認めさせた」と労災申請の報告を行ってくれました。 その後弁護団のお二人から裁判の意義と経過報告を行ってもらい、休憩ののち Google Earth を使っての猪狩さんの労働実態の説明、ご遺族のおふたりの発言へとプログラムは移りました。(弁護団の報告とご遺族おふたりの報告は別掲します。) 集会の後半に、全国一般いわき自由労組の桂...

Mさん証人尋問

 2月25日、未払賃金裁判で猪狩忠昭さんの同僚であったMさんの証人尋問が行なわれました。  久しぶりの公開での裁判ということもあって、裁判所の前でアピール行動を行ってから裁判に臨みました。アピール行動ではいつも駆けつけてくれる宮城合同労組や、ふくしま連帯ユニオン、東京労働安全衛生センターの仲間の他にも、東京から駆けつてくれた全国一般労働組合全国協議会の仲間や、あらかぶさんを支える会からも発言を受けることができました。  証人として出廷したMさんはとても誠実に労働実態について証言をしてくれました。  早朝4:30に出勤し、それがイチエフへの入構に必要なIDやWIDの準備であり、元請宇徳から命じられた検温、血圧測定のためであったこと。宇徳からの依頼でイチエフ入構前に宇徳事務所に寄って納品を行い、それはいわきオールの業務として行っていたこと。  イチエフに着いてからも、決められた移動ルートを使っての移動や、セキュリティチェックや入構手続き・構内の移動などでどれくらい時間がかかるか、「休憩時間」と言われている時間が実際は作業の準備時間であったとについて詳細な証言をしてくれました。  被告・いわきオールの新妻弁護士からの反対尋問も行われ、新妻弁護士は「誘導尋問のようなことはしたくない」と前置きしながら、過去に新妻弁護士はMさんへの聞き取りを行った際に、Mさんが「(いわきオール)馬目社長から、『高速を使ってもいい』と指示された」と言っていたことを問いただしました。しかしMさんは「それは労基署の指導が入った後であり、猪狩さんと一緒に働いていた時のことではありません。猪狩さんと一緒に働いていた時には(『高速を使ってもいい』という指示は)、私は聞いていません」と力強く答えてくれました。  構内の準備時間を短くしようとする質問、例えば「防護服を脱ぐのにはどれくらいの時間がかかりますか?」という質問にも、「脱ぐのだけなら1分くらいですが、スクリーニングがあります。」と実態をきちんと証言してくれました。  裁判官も補充尋問を行い、サマータイム時の休憩について「トイレやタバコ、コーヒーを飲んだりはできますか?」という質問にも「それはできません」とはっきりと答えてくれました。(裁判官のこの質問は、後の報告集会でも「あまりににもイチエフの実態を知らなすぎる」と...

控訴棄却を弾劾する!! あと一歩力及ばず!!

  5月19日、仙台高裁で判決がありました。残念ながら判決内容は控訴棄却。救急医療体制の不備について東京電力・宇徳の責任を認めない不当な判決でした。イチエフ構内の救急医療体制の責任はどこにあるのか、誰にあるのか。誰が労働者の健康と命を守るのか。私たちはこれからもその事を問い続けていく。  しかし、この判決によって東電と宇徳が免罪されたということでもありません。  判決は、「忠昭の異常に気がついた時点で救急医療室に事前連絡が入っていれば、救急医療室において防護服の着用など放射線のスクリーニング検査の準備をし、救急医療室に迅速に急病人を受け入れて直ちに救急処置を施す準備をすることができたはずであって、そうすれば忠昭が午後1時10分より数分前に救急医療室で医師の治療をうけることができたといえる。」と指摘し、事前連絡がなかったために治療開始に数分の遅れが生じたことを認めました。  さらに「作業グループ内に1つでも緊急連絡用の携帯電話が配布され、急病人が発生した場合には速やかに救急医療室に電話連絡する必要があることが作業員に周知され、数分でも早く治療を受けることができたならば忠昭を助けることができたのではないかと悔やまれる気持ちになるのは、実際に忠昭の命を助けられたかは必ずしも明らかでないとしても、その気持ちが理解できないわけではない。」と忠昭さん死亡当時の救急医療体制に疑問の声と遺族の心情に理解を示しました。  それだけではありません。  忠昭さんが働いていた整備工場には固定電話が設置されておらず、「…忠昭を救急医療室に搬送した作業員は誰一人として携帯電話を持たず、搬送中に事前連絡をしようにもできなかった。また、救急医療室に入室するには、除染室に入った後、救急医療室に通じる内扉を叩いて内部の職員を呼ぶように掲示されているにすぎず、忠昭が搬送された際にはすぐに内部の職員が気づいたとはいえ、1Fという最先端の技術を扱う事業所であれば、インターフォンを設置するなど、もっと迅速かつ確実に急病人の症状を伝えられる設備も十分に考えるべきであったといえる。」、「…放射線被曝のリスク管理も含む各種の安全対策を担うことができるのは原子力発電所を設置、運営してきた被控訴人東電以外にはなく、被控訴人東電の第一義的な責任の下で、元請事業者、関係請負人と連携し、労働安全衛生水準の向上に努めな...