3月30日の判決を受けて、当日行われた記者会見と報告集会の様子です。
記者会見は16時よりいわき市記者クラブにて行ないました。
まず、弁護団の齊藤弁護士より判決内容について報告していただきました。
齊藤弁護士は「猪狩さんの死について、長時間労働による致死性不整脈として労基署は過労死として労災認定している。長時間の過酷な労働があったことが示された。残業100時間を超えている。過労死基準をはるかに上回る長時間労働があった。そのことを認めた判決です。
被告は『因果関係がない』と争っていたが司法的な判断でも因果関係があると認められた。会社だけでなく、当時の代表者二人も『故意または重大な過失』があったという判断を下して、個人の責任も認められた」。と判決の意義について触れられました。
ただし、宇徳の責任が認められなかったことについては
「忠昭さんが死亡した責任、宇徳が東電から請けた現場で忠昭さんは亡くなった。責任は宇徳にもあると訴えたが、『宇徳と故人の間に雇用契約はない』と労働時間の管理も問われない。残念です。」と悔しさをにじませながら会見されました。
また、東京電力の責任についても
「忠昭さんが倒れた時、救急医療体制が機能していなかった。原発事故後の構内をは防護服を着て、緊張する作業をする。作業員の命と健康を守るため充分な体制が必要だが、裁判所はこれを認めなかった。」
「忠昭さん死亡時の記者会見も遺族に不快の念を抱かせたことは否定していないが、『因果関係を否定するまで断定的な発表はしていない』『法的な保護に値するほどではない』として棄却した。非常に不満です。」と会見されました。
原告である遺族は、忠昭さんのお連れ合いとご長男が会見に出席されました。
猪狩忠昭さんお連れ合いの発言
「労災認定に続いて、夫の死が過労死であると認められました。いわきオールの責任が大きのはもちろんですが、そもそも重大事故を起こした原発構内で働いて死亡したのに東電と宇徳が責任を負わない。これでは今後も下請け構造のなかで責任逃れが続いてしまうのではないかと危惧します。」
「大企業、元請け、下請けとか関係なくひとりの人間として、いのちを大切にするという当たり前のことを訴えてきました。何十年かかるという収束作業に携わる方々がいます。犠牲になるのは作業員で、その責任を問われるのは末端の会社。元請も発注者も責任は問われない、こんなことが許されるのでしょうか。」
「この裁判を通して原発労働者の環境が少しでも改善されること、夫のような犠牲者が二度と出ないことを願ってきましたが、その思いが棄却されました。
原発だけでなく、下請け構造で働く方を少しでも良い環境に改善したいという目標ができました。そのために微力でもこれからも闘っていきたいと思います。」
ご長男の発言
「3年半たってやっと結果が出ました。父の勤務先(いわきオール)については納得できる判決でした。
でも、一番大事にしたかったのは、今も過酷な現場で働く人がたくさんいます。その方の環境改善に繋がる判決が出ることを期待していました。下請けで働く方にとっても大きな意味のある判決がでたのかなと思います。」
「イチエフで働く限り、東電や元請の責任は絶対にあると思います。その現場で働くことは、誰の責任で働くのかを明らかにして下請けを使うべきです。そうしないと私たちのようにまた悲しむ家族が増えてしまいます。
今後もどんな形であれ、働いている方々のお力になれるようにしていきたいと思います。」
記者会見する齊藤弁護士と原告 |
判決についての報道、リンクを貼り付けます。
記者会見後はいわき市労働福祉会館で報告集会を持ちました。
報告集会は弁護団のお二人から、判決について説明を受けたあと、会場全体にマイクをまわし、参加者一人ひとりに発言をもらいました。
以下、会場からの発言を抜粋します。
「陰ながら姉たちの裁判を支えてこれました。亡くなった兄が一番に作業員の仲間を守りたいと思っていたと思います。棄却された点は残念ですが、ここまでやってこれたことを感謝したいと思います。」(遺族の妹さん)
「当初から全力で遺族を支えてやっていこうと思っていました。これからもみなさんとともに闘っていきたい。」
「猪狩さん労災、裁判に関わって本当に学ぶところが大きかった。廃炉、収束作業を誰が担うのかという問題にもっと光を当てたい。そのために東電や元請に誰が責任をとるのかということを問うていきたい。残念ながら東電と宇徳の責任は認められなかったが、遺族がこの裁判で提起した課題をこれからも共に闘っていきたい。」
「発注者だから元請だから関係ない、という主張は許されない。遺族だけの闘いではなくピンハネと責任逃れのための下請け構造と闘い抜いていかねばならない。」
「原発事故の幕引きが全国で強まっている。終わりにしてはいけない。」
「なぜ、労働者が亡くならなくてはならないのか。くやしい。22年前に自分が関わった労災を思い出しました。悔しかったでしょう。」
「作業員がどんな思いで働いているのか、東電も裁判所もわかっていない。」
「労災は認められても裁判では認められない、というこはある。そういう意味では裁判でも長時間労働が認められた意義は大きい。」
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