3月30日、損害賠償裁判の判決が下りました。悔しい勝利判決でした。
会としての声明等は後日発表しますが、管理者の感想を以下に書きます。
裁判所は被告いわきオールと前社長夫婦の三者に対して共同で原告(忠昭さんのお連れ合い、ご長男、ご長女)三名に合計約2500万円を支払うように命じました。
判決では、前社長夫婦が忠昭さん死亡時に代表取締役と取締役であり、忠昭さんが死亡する前の6か月間の長時間労働を「認識し、又は容易に認識することができた」と認め、「被告いわきオールの代表取締役又は取締役として、従業員の過重労働等を防止するための適切な労務管理ができる体制を何ら準備していなかった」、「(会社が安全配慮義務を遵守する体制を整備すべき)義務を悪意又は重過失により懈怠し、忠昭に過重な業務に従事させ、致死性不整脈により死亡するに至った」として会社法429条に基づく損害賠償責任を認めたものでした。
いわきオールだけでなく当時の代表取締役・取締役の安全配慮義務違反を認め、損害賠償責任を認めたことは勝利判決と言えると思います。
同時に、いわきオールが一貫して通勤時間や自由時間と主張していた、イチエフまでの移動時間とイチエフ構内での移動や装備品の準備と着脱、ミーティングの時間もいわきオールの指揮命令に基づく労働時間として認めました。
労基署による労災認定、未払い賃金裁判、そして損害賠償裁判のいずれもがいわきオールの主張を退けました。今回の判決でも、忠昭さん死亡前6ヶ月間の時間外労働が月平均100時間近くあったとして、労基署とほぼ同じ認定をしています。
判決では朝の移動時間について、コンビニに立ち寄っていたとしても時間としては僅かであること、そして「被告いわきオールの事業所から1F(イチエフ)に移動するまでの時間は被告宇徳の事務所に部品を納入する必要性などを考慮するまでもなく、業務の過重性を判断するに際しては、作業時間と同様に、被告いわきオールの指揮命令に基づくものとして、労働時間に含めるのが相当である。」としました。
未払い賃金裁判の判決に続いて、朝の移動などが労働時間であると認められたことは、イチエフや中間貯蔵施設、除染にとどまらず建設・土木や警備業など長時間の移動を前提とする労働者の権利拡大の道をまたひとつ切り開いたと言えます。
しかしながら、毎朝の納品を命じた元請・宇徳の安全配慮義務違反については退けられました。
そして東京電力への請求も棄却されました。
忠昭さんが亡くなった時に整備工場内には電話もなく、周りにいた誰もが携帯電話をもっていなかったためにER(救急救命室)での処置が遅れました。そのため原告は、東電が適切な医療・救急救命体制を構築する責任を怠ったとして不法行為を問うていました。
しかし、判決は忠昭さん死亡当時、東電は携帯電話の持ち込みを禁止していなかったことや1日あたり4000~6000人の作業員全員に携帯を支給するためには相当な支出と管理が必要であるとして棄却したのです。
この感覚は、あまりにも現場の感覚を無視したものだと言わざるを得ません。確かに忠昭さんの死亡時に携帯電話の持ち込みは禁止されていません。しかし、防護服にはポケットもありませんし、防護服の中に着る下着の胸ポケットにむりやり携帯を入れても、使う際には防護服を脱がなければなりません。なにより、現場や扱う機械などが汚染されているので多くの労働者は私物の携帯電話を構内の休憩所に置いて作業に向かっていました。
作業員全員に携帯を支給するのは支出と管理が困難、とする東電の主張をそのまま認めるのも理解ができません。忠昭さんが亡くなる前から東電は、イチエフ構内の複数の現場で責任者に汚染されても良いガラケーを支給していましたし、忠昭さんの亡くなった約半年後(2018年4月)には約5000人の作業員全てにスマホを配備したのです。
労働者の命を守る体制に費用を持ち出す主張すら言語道断なはずです。しかも、忠昭さんが亡くなったわずか半年後にはその体制を構築できているにも関わらず、支出と管理が困難という東電の主張を認めるとは。ここまで書きながらあらためて怒りが沸いてきます。
忠昭さんが亡くなった当日の記者会見で東電が「業務との因果関係はない」と繰り返し発表したことについても、その責任を問うていました。事実、のちに忠昭さんは過労死であったことが労基署によって認められたのですから。しかし、それも棄却されました。
判決では東電が「我々としては作業に起因し、そういった因果関係があるものではないという風に考えております。」と記者発表したことは認めながら(実際に何人もの記者の問いにそう答えた)、「詳細のところはちょっと控えさせていただきたい」「それ以上の詳細…病死…死因だとかそういったことについては差し控えさせていただきたい」などの留保がついている点などをもって「一般的な普通の注意と読み方を基準とすれば、忠昭の死因や1Fの業務との関係については被告東電において調査中であり(中略)被告東電は現時点の見解を述べているににすぎないのであって(中略)忠昭と1Fにおける作業との間に因果関係がないとか、過労死ではないといった断定したものとは理解できず」などと書いています。
ここも本当に理解できません。当日の記者会見ではある記者に「過労死などではないのか」とはっきり聞かれ、それを否定しているというのに。
いわきオールという酷い下請けのみが問題にされ、元請や東京電力は何の責任も問われない。まさに下請け構造そのものの判決です。
忠昭さんが亡くなったさいの記者会見でも東電は「我々と直接契約しているのは宇徳…」という旨発表して、下請けの労務管理や労働者の作業・勤務実態から目をそらし続け責任逃れを図りました。それと同じ構造が繰り返されたのです。
下請け構造によって、忠昭さんは二度殺されたのです。
この下請け構造を解体するためにも闘いを続けましょう。
悔しい判決ですが、現場労働者の権利拡大を切り開いた判決でもあります。未払い賃金判決、そして今回勝ち取った判決を武器に下請け構造を問い続け、労働者の安全と権利と名誉を守る闘いを続けていきましょう!!
判決前に最後のアピールを行う原告・遺族 |
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