スキップしてメイン コンテンツに移動

速報 未払賃金裁判 勝訴!!

 本日、イチエフ過労死事件の未払い賃金裁判の判決が出ましたのでお知らせします。
福島地方裁判所いわき支部は、被告いわきオールに対して268万6338円の支払いを命じる判決を下しました。必ずしも、原告の主張が100パーセント認められたわけではありませんが、勝利判決と言える内容となっています。
 会としての正式な声明は後日発表されることになりますが、判決について当ブログ管理人の感想を簡単にまとめたいと思います。


 何よりもまず、裁判所は被告いわきオールに268万6338円の支払いを命じました。これは、いわきオールの「残業はない」という主張を完全に退け、250万円を超える未払い賃金があったことを認めたのです。その一点のみもをもっても、勝利判決であると言えると思います。
 その中で、裁判所はいわきオールからイチエフまでの移動時間を労働時間であると認定しました。オールからイチエフまで移動する間、「朝食などの購入のためにコンビニエンスストアに立ち寄ることはあったが、それ以外には寄り道をすることなどなかった(中略)…被告事業所(いわきオール)出勤から1Fまでの移動時間は、宇徳広野事務所への部品の納入の必要性などを考慮するまでもなく、単なる通勤時間でない被告の指揮監督下に置かれていた時間と評価できるから、労働時間に該当する。」という内容は、猪狩忠昭さんだけでなく、イチエフや除染に留まらず建築・土木や警備など様々な職種の労働者への重大な影響を及ぼす判決であると思います。
 また、イチエフ入構後に車両整備工場で作業する8時半までの間の、移動や準備・待機時間についても、被告の指揮命令下に置かれていた=労働時間であるとしています。原告はその全てを労働時間であると主張していましたが、裁判所はその中で20分程度の休憩時間があったとしています。原告の主張が全面的に認められずに残念でしたが、20分程度というのは労災認定時の労基署の認定より短い時間であり(労基署が労働時間として認めた時間よりさらに多い時間を労働時間として認定した)、より実態に即した判決であると言えます。
 未払い賃金(残業代)計算の基礎にイチエフ手当を入れるかどうかに関しても、労基署は入れないという判断でした。しかし、判決ではイチエフ構内での作業が始業から8時間を超えた部分、「1Fで作業を行った労働時間に限っては割増賃金の基礎となる賃金に1F手当を含めるべきである」として、細かく労働実態を確認して割増賃金を計算しています。その点でも労基署の判断よりも一歩前進したと言えると思います。
 他方で、遺族が願った付加金(悪質な事業所への制裁という側面をもつ)に関しては認められず、被告が途中で解決案を示したことを裁判所は評価しているようです。そこは正直、釈然としない部分ではあります。
 最後になりますが、今回の判決のとりわけ労働実態に関しては、去る2月25日に行われたMさんの証人尋問の成果が大きかったと思います。判決文のいたるところに「証人M」という記述がありました。勇気を出して証人尋問に臨んでいただいたMさんにはこの場を借りてお礼を言いたいと思います。

 判決後はすぐに郡山に移動して記者会見に臨みました。
 以下、記者会見での遺族のコメントを紹介します。
 

 夫が亡くなって約2年半、長いあいだみなさまに支えていただいて判決を迎えました。
 残業代が払われなかったことを認めてくれたことは評価したいと思います。
 今も原発で働いている人が、こんな理不尽な働かせられ方がゼロになること、労働者の尊厳が認められるようになることを願っています。夫の願った想いを遺族が引き継いで闘っていくことが夫の供養になると思います。
A(原告・猪狩忠昭さんのお連れ合い)

 満足のいく判決ではありませんが、ひとつの大きな一歩は残せたと思います。この一歩が今も原発で働いている方の環境の改善になるように願っています。
K(遺族・猪狩忠昭さんご長男)


コメント

このブログの人気の投稿

いわきオールからの謝罪を勝ち取る!!

  いわきオールは控訴を断念し、地裁判決を受け入れる旨遺族に表明していました。  同時に判決によって命じられていた2500万円(利息を加算すると2905万円)の支払期日の延長を原告(遺族)に求めていました。  遺族はあらためて、いわきオールに謝罪を要求し、当時の社長夫妻の連名での謝罪を勝ち取ることができました。  「いわきオール前社長夫妻は、遺族に対し、本件判決認定のとおり、いわきオール株式会社が安全配慮義務に違反したこと、前社長夫妻らが亡忠昭殿の業務量またはその内容を調整する措置を講ずるべき注意義務に違反したこと、上記各注意義務違反によって亡忠昭殿が死亡したこと(上記各注意義務違反と亡忠昭殿の死亡との間に因果関係が認められること)を認め、心から謝罪する。」という文書を勝ち取り、2905万円の入金も確認しました(勝ち取った文書では遺族および社長夫妻は実名ですが、ブログ内では「遺族」「前社長夫妻」としました。)。  「社長に謝ってほしい」という遺族の思いはなんとか果たすことができました。  これも、裁判と同時に申し入れ行動やポスティング、情宣活動など法廷の内外での闘いの成果です。  いわきオールとの争いは勝利的に解決しました。しかし、東京電力と宇徳を相手にした救急医療体制の不備と不法行為の認定を求める闘いは、まだまだ続きます。  引き続き皆様の支援を訴えます。    

連続行動② いわきオールへの申し入れ

 東京電力・宇徳への抗議申し入れ行動を行った翌日(4月4日)、いわき自由労組および全国一般労組全国協議会の呼びかけで、いわきオールへの申し入れ行動を行いました。  いわきオールは前日に弁護士を通じて「控訴をしない」旨の連絡がありました。しかし、労組との団交は拒否したままであり、遺族に謝罪の言葉もありません。  いわき自由労組と全国一般労組全国協は、応援に駆けつけてくれた宮城合同労組、ふくしま連帯ユニオンとともにいわきオール社前でのアピール行動と申し入れを行いました。   いわきオールへの申し入れを終えたあとは、いわき駅前に移動し、ビラまきとアピールの行動を一時間行いました。土曜の17時すぎでも人影はまばらでしたが、それでも通る方からは「頑張って」と励ましの声を頂きました。   以下はいわきオールへの申し入れ書です。                                2020年 4 月 4 日 いわきオール株式会社 代表取締役 馬目 信一 様 全国一般労働組合全国協議会 中央執行委員長 平賀雄二郎 いわき自由労働組合 執行委員長   鈴木  裕 団体交渉申し入れ書 本年3月26日、福島地方裁判所いわき支部は、残業代等請求事件において、貴殿に対し故猪狩忠昭氏に関する不払い残業代の支払いを命じました。2018年の行政庁による労災認定に続いて、司法の場においても貴殿が故忠昭氏に無給で過労死ラインを超える長時間残業を強いて死亡させた事実が明らかにされました。今貴殿は裁判所から、長年の不払い残業代を遺族に支払うよう命じられています。 故忠昭氏の妻は 2018 年 1 月に当労働組合に加入して不払いとなっている残業代の支払いを求め続けてきました。これに対して貴殿は、「残業はなかった」と言い張ってきました。この「残業はなかった」という見解が故忠昭氏を冒頭し遺族を苦しめてきました。しかし、裁判所が貴殿の行った違法な残業代不払いを認定し、これを是正させる判決を言い渡した以上、故忠昭さんと遺族に心からお詫びして紛争をすみやかに終結させるのが筋です。開き直って控訴し、いたずらに長引かせることは許されません。 つきましては下記のとおり紛争を早期に解決するため団体交渉を申し入れます。代表者である

東京新聞、「東電『知らぬ存ぜぬ』」

東京新聞が5月23日の意見陳述について記事を書いてくださりました。ご覧ください。