スキップしてメイン コンテンツに移動

未払賃金裁判 判決についての声明

「福島第一原発過労死責任を追及する会」事務局長名での声明が出たので、公開します。
 


        2020年330        
                       福島第一原発 過労死責任を追及する会
                              事務局長 狩野 光昭


-福島第一原発で過労死した猪狩忠昭さんの残業代未払い残業代裁判の判決-
     3月26日、裁判所がいわきオールに268万円の支払いを命じる!!
会社は判決に従え!! 遺族に謝罪しろ!! 



20171026、東京電力福島第一原発の廃炉現場で、自動車整備士猪狩忠昭さんが過労死ラインを超える長時間残業を無給で長期間強いられ、勤務中に致死性不整脈で死亡した。東電広報部は当日の記者会見で、「業務と死亡に因果関係がない、労災ではない!」と繰り返し述べた。忠昭さんの雇用者いわきオール株式会社も遺族に「労災ではない!」と言い放った。しかし納得しなかった遺族が、真相を究明するため悲しみをこらえて調査活動を開始した。調査の結果、忠昭さんが無給で月100時間を超える時間外労働をさせられていたことが明らかとなり、遺族は忠昭さんの無念を晴らすため、労災認定の申請といわきオールに対する未払賃金の支払い請求を行う決心を固めた。
20187月に未払い残業代請求裁判が福島地方裁判所いわき支部で始まり、10月にはいわき労基署が「長時間労働による過労死」を認定した。そして本年326日、原告が請求した通りの金額にはならなかったが、裁判所は111か月分の残業代268万6338円の支払いをいわきオールに命じる判決を言い渡した。
第1に、判決は「原発までの毎朝の走行は自由裁量での通勤時間」とするいわきオールの主張を退け、原告側の主張の通り、毎朝の移動を「使用者の指揮監督下にあった労働時間」と認定した。全国の作業現場には忠昭さんと同様、朝早く使用者が定めた場所に集合し、指定された車に分乗して現場に向かう労働者が沢山いる。彼らの早出残業代支払い要求を後押しできる判例が作られたとも言える。
第2に休憩時間は本年2月の証人尋問での忠昭さんの同僚の証言に基づいて算定され、労基署が労災認定の際に算定した休憩時間よりも全体として短い時間となった。そのことは、この裁判と併行して闘っている安全配慮義務違反を問う損害賠償裁判を有利にするであろう。
第3に判決文別紙の時間外働計算表では、一月100時間を超えて、あるいは各月平均80時間を超えて忠昭さんを時間外労働させていた事実が認定されている。認定された時間外労働は過労死基準を超え、2019年の労働基準法の改定施行(働き方改革)において使用者に罰則が加えられることとなった。かくしてこのたび行政の場(労災認定)ばかりではなく、過酷な長時間労働の事実が司法の場でも明らかにされた。しかも無給で課せられた事実が明らかにされた。残業代を無給にさえすれば、残業時間が長ければ長いほど使用者の利益が増え、反対に労働者の疲労が増し続ける。すなわち無給残業が過労死の原因になっている。過労死をなくすため、無給残業を許さない闘いを進めよう。
最後に、この判決の背景には、無念を晴らすための遺族の継続的な闘い、弁護団の緻密な立証活動、遺族をつつむ全国の大勢の支援の仲間、そして証言台でしっかり事実を述べた忠昭さんの同僚の存在がある。57歳で過労死した忠昭さんを悼む人達の大きな輪が闘い取った勝利判決と言える。
その一方で、判決は原告が求めた付加金の支払いを認めなかった。判決文では「・・・使用者に対する制裁たる性格を有する付加金の支払いを被告に命じることは相当ではない」とし、その理由を、「・・・被告が解決金を支払う和解案を提示した」と説明した。しかし、いわきオールが金銭和解を申し入れたのは、虚偽を並べた主張を維持できなくなったからであり、けっして反省心からではない。裁判所はその点を取り違えている。 
いわきオールは判決に従え。そしてすべての面で遺族に謝罪しろ。東電は自身の行う事業現場で違法な無給残業が長年はびこり、このたび裁きが下ったことを深く受け止めるべきだ。整備工場で忠昭さんを使用していた元請け宇徳も長時間労働と残業代不払いを放置した責任がある。東電と宇徳も遺族に謝罪しなければならない。
全国の皆さま。おかげさまで労災認定に続き、未払い賃金の支払い判決が得られました。
これまでの厚いご支援に感謝するとともに、遺族の闘いへより一層のお力添えをお願い申し上げます。
以上












コメント

このブログの人気の投稿

控訴棄却を弾劾する!! あと一歩力及ばず!!

  5月19日、仙台高裁で判決がありました。残念ながら判決内容は控訴棄却。救急医療体制の不備について東京電力・宇徳の責任を認めない不当な判決でした。イチエフ構内の救急医療体制の責任はどこにあるのか、誰にあるのか。誰が労働者の健康と命を守るのか。私たちはこれからもその事を問い続けていく。  しかし、この判決によって東電と宇徳が免罪されたということでもありません。  判決は、「忠昭の異常に気がついた時点で救急医療室に事前連絡が入っていれば、救急医療室において防護服の着用など放射線のスクリーニング検査の準備をし、救急医療室に迅速に急病人を受け入れて直ちに救急処置を施す準備をすることができたはずであって、そうすれば忠昭が午後1時10分より数分前に救急医療室で医師の治療をうけることができたといえる。」と指摘し、事前連絡がなかったために治療開始に数分の遅れが生じたことを認めました。  さらに「作業グループ内に1つでも緊急連絡用の携帯電話が配布され、急病人が発生した場合には速やかに救急医療室に電話連絡する必要があることが作業員に周知され、数分でも早く治療を受けることができたならば忠昭を助けることができたのではないかと悔やまれる気持ちになるのは、実際に忠昭の命を助けられたかは必ずしも明らかでないとしても、その気持ちが理解できないわけではない。」と忠昭さん死亡当時の救急医療体制に疑問の声と遺族の心情に理解を示しました。  それだけではありません。  忠昭さんが働いていた整備工場には固定電話が設置されておらず、「…忠昭を救急医療室に搬送した作業員は誰一人として携帯電話を持たず、搬送中に事前連絡をしようにもできなかった。また、救急医療室に入室するには、除染室に入った後、救急医療室に通じる内扉を叩いて内部の職員を呼ぶように掲示されているにすぎず、忠昭が搬送された際にはすぐに内部の職員が気づいたとはいえ、1Fという最先端の技術を扱う事業所であれば、インターフォンを設置するなど、もっと迅速かつ確実に急病人の症状を伝えられる設備も十分に考えるべきであったといえる。」、「…放射線被曝のリスク管理も含む各種の安全対策を担うことができるのは原子力発電所を設置、運営してきた被控訴人東電以外にはなく、被控訴人東電の第一義的な責任の下で、元請事業者、関係請負人と連携し、労働安全衛生水準の向上に努めな...

4月3日、4日 東京電力・宇徳、いわきオールへの連続行動の呼びかけ

 いわき自由労働組合および全国一般労働組合全国協議会の4月3日、4日の連続行動の呼びかけをアップします。  直前の呼びかけになり申し訳ありませんが、参加できる方はぜひお願いします。  以下、呼びかけ文です。   福島第一原発過労死事件 未払い賃金裁判  勝利判決下る!!  いわきオール、東京電力、宇徳は遺族に謝罪しろ!!    福島第一原発(イチエフ)過労死事件の賃金未払い裁判において、福島地裁いわき支部は 2020 年 3 月 26 日、いわきオール(株)に対して 1 年 11 ヶ月分の未払い賃金約 270 万円の支払いを命じる判決を下しました。   2017 年 10 月 26 日、福島第一原発構内の車両整備工場で働いていた猪狩忠昭さん( 57 歳)は、防護服・全面マスク姿のまま倒れ帰らぬ人となりました。死因は「致死性不整脈」でした。  東京電力は、猪狩さんが亡くなったその日の記者会見で「労災、過労死ではない」と発表。雇用者いわきオールも「労災ではないから」と遺族に言い放ちました。遺族は、いわき自由労働組合に加入し、タイムカードの公開を要求しました。その結果、猪狩さんは亡くなる直前の半年間でひと月 100 時間を超える時間外労働(残業)を強いられていたことが分かりました。これはいわゆる過労死ライン(ひと月 80 時間以上)を大きく上回ります。また、残業代もほとんど払われていないことも明らかになりました。  遺族は、残業代の適正な支払いを求めていわきオールを訴え、同時に労働基準監督署に労災の申請を行いました。 2018 年 10 月、労基署は「長時間労働による過労が原因」とする労災を認定しました。しかし、労災認定を受けてもいわきオール、東京電力、元請企業・宇徳からの謝罪はありませんでした。しかもいわきオールは「残業はなかった」と主張し続け、労基署による是正指導を受けても残業代の適正な支払いを拒否していました。 しかし、労基署だけでなく司法も、いわきオールが猪狩さんに過労死ラインを上回る長時間労働をほぼ無給で強いていた事実を認めたのです。いわきオールは判決を真摯に受け止め、速やかに遺族に謝罪するべきです。 原発労働者の安全、権利、名誉を守れ!!     いわきオール、東京電力、宇徳は労働組合との話し合い...

3.30 判決に向けて

  いよいよ3・30に判決を迎えます。  安全配慮義務違反の認定を勝ち取り、勝利判決へ!!  時系列が前後しますが、裁判の振り返りも兼ねて3月1日の報告集会の様子をアップします。  3月1日、いわき地裁での被告・原告の証人尋問を終えたあとは労働福祉会館に移動して報告集会を持ちました。 参加者の誰もが、被告のデタラメを圧倒した遺族の証言に胸を打たれ、熱気に包まれた報告集会でした。 霜越弁護士は、今日までの経過を報告。「被告のこれまでの反論は、『そもそも病名が違う』『本人の不摂生もあったので減額してくれ』というものです。未払い裁判で否定されたのにまだ『残業はない。移動時間は労働時間でない。』とも主張している。しかし『(イチエフでの作業のない日は) 8 時前に作業をさせていない』と言うが、前社長が出社するのは 8 時過ぎだと証言した。」「入院した時の給料もマイナスになっている。忠昭さんが経済的な理由からイチエフを希望した、と言うがじゃあ有給を勧めたのかという問いには答えが二転三転している。裁判官も『とてもこの証言は信用できない』と思っているでしょう。」と発言してくれました。 齊藤弁護士からは「いわきオールの落ち度によって忠昭さんが命を落とした。いわきオールは『それは限定的だ』『責任がない』と印象付けるために証言をおこなった。しかし、反対尋問での霜越弁護士の弾劾によって功を奏さなかった。」「東電が速やかに AED を使えていないことや電話連絡など、救命体制があまりに脆弱であったことも証言から明らかにできた。」と証言の意義にふれ、また「大変緊張するなか原告の 3 名は自分の役割を果たして被告の責任を明らかにされました。大きな拍手を送りたいと思います」。と遺族を激励されました。 原告である遺族からも一言ずつ感想をもらいました。 「今日の前社長の証言を聞いていて、夫はこんな人の下で働いていたのかと思うと可哀想でしょうがなかった。あんな経営者の下で、第一原発で働かされている方が居てはならない。証言をしているあいだはずっと背後からみなさんの声援が聞こえて来ました」。 「 3 年と 4 ヶ月、今日まで長いあいだありがとうございました。判決はもちろん気になりますが、いわきオールのような経営者がひとりでも減ること、あんな経営者のもとで働く労働者がひとりでも減ることを願っています」。 「私た...