スキップしてメイン コンテンツに移動

5・19集会 弁護団の発言


 ●齊藤正俊弁護士
発言の冒頭に齊藤弁護士は「私の座っている席の目の前に猪狩忠明さんの写真が置いてあり『弁護士、頑張れよ!』と言われているような気がしています。なんとしても負けられない訴訟であると考えています。訴訟の中で弁護団が頑張るというのはもちろんですが、裁判官に下手な判決を下させないという市民の強い監視の目。被告となっている会社に対して、解決に向けた誠実な態度を示せという幅広い運動が同時に必要です。」と発言され訴訟と並行して大衆運動の必要を説きながら、この2件の裁判の意義について語られました。



■未払賃金請求裁判について
いわきオールが忠明さんにほんのわずかな時間外賃金しか払っていないが、2年分の未払い時間外賃金を払えという訴訟。
朝の4時半から夕方6時過ぎまで働いていた。まともに時間外手当が払われていれば、かなりの額になるがいわきオールは払っていない。
猪狩さんはほとんどをサービス残業として働いていたことになる。正当な時間外手当を支払わせることで、様々なサービス残業を強いられて苦しんでいる方への励みになるはずだ。眠っているサービス残業を掘り起こす意義がある。

■損害賠償請求裁判について
『いわきオール/宇徳への安全配慮義務違反に対する損賠請求』
長時間労働によって忠昭さんは亡くなった。その責任はどこにあるのか。
労働者は労働力を提供するが、自分の命や健康まで会社に捧げるわけではない。忠昭さんだって死を賭けてまで長時間労働をするなんてことは考えてなかったはずだ。
いわきオールは長時間労働をさせたという意識があまりない。自分に立場を置き換えるような感覚がないと事業主はどんどん鈍感になる。もっと安全に、命に配慮する社会でなくてはならない。そのための訴訟でもある。
いわきオールだけでない。元請・宇徳も同様である。作業環境や装備がどういうものであったのか熟知している。作業環境や安全の配慮を怠ってきた。
忠昭さんの長時間労働によって死という最悪の結果を生んだ。その責任を明らかにすることで、これからの安全や健康に配慮させるという意義もある。

『東電/宇徳に対する賠償請求』
忠昭さんが倒れた時、ER(救急救命室)に連絡するすべがなかった。イチエフという環境の中で携帯が持ち込めない。万が一、異常をきたしたときにきちんと対応してくれるという期待があったはずだ。その期待がもろくも崩れ去った。毎日4000人もの方々が働いている。その方々が急病を発症した時に第二、第三の忠昭さんが出ないとも限らない。ERはきちんと機能してたのか。
忠昭さんの期待が裏切られた。期待権の侵害、それ以上にERの体制を正すことで労働環境を改善させるという意義を持つ。

『東電記者会見に対する賠償請求』
忠昭さんが急死された日、東電は記者会見をやっていた。遺族ですらまだはっきりとしたことが分かっていないのに「業務との因果関係はない」という東電の発言にショックを受けた。確固たる事実を知った上で会見をしなくてはならない。
現に労災が認められ、東電での作業を含めて因果関係があったことが明らかになった。いったいあの記者会見はなんだったのか。東電の作業員への思いの軽さがうかがえる。
そういったことを含めて、東電の責任を追及する裁判に勝利し、忠昭さんと遺族の無念を晴らし、イチエフの労働実態、社会に蔓延している長時間労働の怖さを訴えていき過労死を許さない社会を作っていくという意義を持つ。


●霜越優弁護士
霜越弁護士からは裁判の中身の説明をしていただきました。
『いわきオールの反論/認否について』
いわきオールは時間外労働はほとんど発生していないという主張をしている。「移動時間は勤務時間ではなく、8時からが勤務開始。夕方5時以降は仕事をしていたのではなく時間を潰していた」と主張している。朝4時半にいわきオールを出る忠昭さんが、なんで1時間もだらだらと時間を潰すのか、おそらく通用しない。
4時半にタイムカードを押して、その後納品や納車も行っていた。8時前は労働時間でないという主張は認められない。
また、いわきオールは夕方6時からなぜか10分程度の残業を認めている。1時間時間を潰して10分残業していたという主張は通用しないだろう。

『宇徳の反論/認否』
いわきオールと宇徳は偽装請負で実際には派遣であったが、宇徳はそれを否定している。安全配慮義務、時間管理、健康面等宇徳には一切責任がないという主張につながっていくのだろう。現時点で、宇徳は認否のみで詳しい主張は分からない。しかし、少なくとも宇徳は忠昭さんが早朝から移動を行っていたこと、いわきオールと原発との距離や広野の宇徳事務所に納品をしていたことはわかっている。にも関わらず、一切なんの責任がないとの認否の不合理さを今後の訴訟で追及していきたい。

『東電の反論/認否』
東電は認否以外に反論をしてきている。
携帯の持ち込みは禁止していない。ある程度ERに入るのに時間はかかったことは認めているが放射能汚染の確認のために必要な作業を行ったからであって連絡体制の問題はないと主張している。
記者会見についても記者の質問に誠実に回答したもので、社会通念上の限度を超える違法性はないと主張している。しかし、誠実に回答するなら死因を「業務との因果関係は不明である」と答えるべきだ。現に忠昭さんが亡くなったあとに別の作業員が亡くなった時の記者会見では死因と業務との因果関係について「不明」としている。
左:齊藤弁護士 右:霜越弁護士

コメント

このブログの人気の投稿

控訴棄却を弾劾する!! あと一歩力及ばず!!

  5月19日、仙台高裁で判決がありました。残念ながら判決内容は控訴棄却。救急医療体制の不備について東京電力・宇徳の責任を認めない不当な判決でした。イチエフ構内の救急医療体制の責任はどこにあるのか、誰にあるのか。誰が労働者の健康と命を守るのか。私たちはこれからもその事を問い続けていく。  しかし、この判決によって東電と宇徳が免罪されたということでもありません。  判決は、「忠昭の異常に気がついた時点で救急医療室に事前連絡が入っていれば、救急医療室において防護服の着用など放射線のスクリーニング検査の準備をし、救急医療室に迅速に急病人を受け入れて直ちに救急処置を施す準備をすることができたはずであって、そうすれば忠昭が午後1時10分より数分前に救急医療室で医師の治療をうけることができたといえる。」と指摘し、事前連絡がなかったために治療開始に数分の遅れが生じたことを認めました。  さらに「作業グループ内に1つでも緊急連絡用の携帯電話が配布され、急病人が発生した場合には速やかに救急医療室に電話連絡する必要があることが作業員に周知され、数分でも早く治療を受けることができたならば忠昭を助けることができたのではないかと悔やまれる気持ちになるのは、実際に忠昭の命を助けられたかは必ずしも明らかでないとしても、その気持ちが理解できないわけではない。」と忠昭さん死亡当時の救急医療体制に疑問の声と遺族の心情に理解を示しました。  それだけではありません。  忠昭さんが働いていた整備工場には固定電話が設置されておらず、「…忠昭を救急医療室に搬送した作業員は誰一人として携帯電話を持たず、搬送中に事前連絡をしようにもできなかった。また、救急医療室に入室するには、除染室に入った後、救急医療室に通じる内扉を叩いて内部の職員を呼ぶように掲示されているにすぎず、忠昭が搬送された際にはすぐに内部の職員が気づいたとはいえ、1Fという最先端の技術を扱う事業所であれば、インターフォンを設置するなど、もっと迅速かつ確実に急病人の症状を伝えられる設備も十分に考えるべきであったといえる。」、「…放射線被曝のリスク管理も含む各種の安全対策を担うことができるのは原子力発電所を設置、運営してきた被控訴人東電以外にはなく、被控訴人東電の第一義的な責任の下で、元請事業者、関係請負人と連携し、労働安全衛生水準の向上に努めな...

4月3日、4日 東京電力・宇徳、いわきオールへの連続行動の呼びかけ

 いわき自由労働組合および全国一般労働組合全国協議会の4月3日、4日の連続行動の呼びかけをアップします。  直前の呼びかけになり申し訳ありませんが、参加できる方はぜひお願いします。  以下、呼びかけ文です。   福島第一原発過労死事件 未払い賃金裁判  勝利判決下る!!  いわきオール、東京電力、宇徳は遺族に謝罪しろ!!    福島第一原発(イチエフ)過労死事件の賃金未払い裁判において、福島地裁いわき支部は 2020 年 3 月 26 日、いわきオール(株)に対して 1 年 11 ヶ月分の未払い賃金約 270 万円の支払いを命じる判決を下しました。   2017 年 10 月 26 日、福島第一原発構内の車両整備工場で働いていた猪狩忠昭さん( 57 歳)は、防護服・全面マスク姿のまま倒れ帰らぬ人となりました。死因は「致死性不整脈」でした。  東京電力は、猪狩さんが亡くなったその日の記者会見で「労災、過労死ではない」と発表。雇用者いわきオールも「労災ではないから」と遺族に言い放ちました。遺族は、いわき自由労働組合に加入し、タイムカードの公開を要求しました。その結果、猪狩さんは亡くなる直前の半年間でひと月 100 時間を超える時間外労働(残業)を強いられていたことが分かりました。これはいわゆる過労死ライン(ひと月 80 時間以上)を大きく上回ります。また、残業代もほとんど払われていないことも明らかになりました。  遺族は、残業代の適正な支払いを求めていわきオールを訴え、同時に労働基準監督署に労災の申請を行いました。 2018 年 10 月、労基署は「長時間労働による過労が原因」とする労災を認定しました。しかし、労災認定を受けてもいわきオール、東京電力、元請企業・宇徳からの謝罪はありませんでした。しかもいわきオールは「残業はなかった」と主張し続け、労基署による是正指導を受けても残業代の適正な支払いを拒否していました。 しかし、労基署だけでなく司法も、いわきオールが猪狩さんに過労死ラインを上回る長時間労働をほぼ無給で強いていた事実を認めたのです。いわきオールは判決を真摯に受け止め、速やかに遺族に謝罪するべきです。 原発労働者の安全、権利、名誉を守れ!!     いわきオール、東京電力、宇徳は労働組合との話し合い...

3.30 判決に向けて

  いよいよ3・30に判決を迎えます。  安全配慮義務違反の認定を勝ち取り、勝利判決へ!!  時系列が前後しますが、裁判の振り返りも兼ねて3月1日の報告集会の様子をアップします。  3月1日、いわき地裁での被告・原告の証人尋問を終えたあとは労働福祉会館に移動して報告集会を持ちました。 参加者の誰もが、被告のデタラメを圧倒した遺族の証言に胸を打たれ、熱気に包まれた報告集会でした。 霜越弁護士は、今日までの経過を報告。「被告のこれまでの反論は、『そもそも病名が違う』『本人の不摂生もあったので減額してくれ』というものです。未払い裁判で否定されたのにまだ『残業はない。移動時間は労働時間でない。』とも主張している。しかし『(イチエフでの作業のない日は) 8 時前に作業をさせていない』と言うが、前社長が出社するのは 8 時過ぎだと証言した。」「入院した時の給料もマイナスになっている。忠昭さんが経済的な理由からイチエフを希望した、と言うがじゃあ有給を勧めたのかという問いには答えが二転三転している。裁判官も『とてもこの証言は信用できない』と思っているでしょう。」と発言してくれました。 齊藤弁護士からは「いわきオールの落ち度によって忠昭さんが命を落とした。いわきオールは『それは限定的だ』『責任がない』と印象付けるために証言をおこなった。しかし、反対尋問での霜越弁護士の弾劾によって功を奏さなかった。」「東電が速やかに AED を使えていないことや電話連絡など、救命体制があまりに脆弱であったことも証言から明らかにできた。」と証言の意義にふれ、また「大変緊張するなか原告の 3 名は自分の役割を果たして被告の責任を明らかにされました。大きな拍手を送りたいと思います」。と遺族を激励されました。 原告である遺族からも一言ずつ感想をもらいました。 「今日の前社長の証言を聞いていて、夫はこんな人の下で働いていたのかと思うと可哀想でしょうがなかった。あんな経営者の下で、第一原発で働かされている方が居てはならない。証言をしているあいだはずっと背後からみなさんの声援が聞こえて来ました」。 「 3 年と 4 ヶ月、今日まで長いあいだありがとうございました。判決はもちろん気になりますが、いわきオールのような経営者がひとりでも減ること、あんな経営者のもとで働く労働者がひとりでも減ることを願っています」。 「私た...